【非公式外伝】ガンダムビルドファイターズvs.プラモ狂四郎 第三章「ガンプラマイスター」

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【非公式外伝】ガンダムビルドファイターズvs.プラモ狂四郎 第三章「ガンプラマイスター」


初地上波ガンプラアニメ『ガンダムビルドファイターズ』放映記念作品
ビルドファイターズvsプラモ狂四郎

全9章構成全10章構成で今回は第三章です。残り6章
前回はこちら↓
【非公式外伝】ガンダムビルドファイターズvs.プラモ狂四郎 序章
【非公式外伝】ガンダムビルドファイターズvs.プラモ狂四郎 第一章「ビルドファイターズ」
【非公式外伝】ガンダムビルドファイターズvs.プラモ狂四郎 第二章「Imagination < Reality」

次回は2月下旬~3月下旬公開予定なるべく早く公開予定です。

それではお楽しみください。




 第三章 「ガンプラマイスター」

 ──深く澱む意識の底。表情を失った大衆が「ださい」「キモイ」を連呼しながら《ビルドストライク》を廃材で打ち据える。錆の涙を垂れ流す《ビルドストライク》を前にして、狂ったように助けを求むイオリ・セイの叫びは、いつまでも無音のままであった。やがて《ビルドストライク》は冷たく動かなくなり、傍観者たちは指差しながらそれを笑う。眼球を蝋のように曇らせたセイは頭髪を掻き乱しながら意識を眩ませる──そんな陽炎のような心象風景が際限なく、浮かんでは消えていった。

 * * * * *

 機械的に開いた自動ドアがセンサーチャイムを告げ、塞ぎこんだイオリ・セイを招き入れた。いまだ青白みのひかないイオリ模型店内、イオリ・リンコは帰ってきた息子の姿を見、たわやかに、お帰り、と口にした。その言葉を受け、セイは視線を伏せながら小さく早口に、ただいま、と返した。
 リンコは息子の塞いだ様子に何かがあったことを察した。しかし、それを直接追求することはしなかった。あくまでいつもの調子で母親たろうと努め、微笑を作り、明るく声をかけた。
「そういえばね、さっき凄かったのよ。お店に誰が来たと思う? あの〈プラリーガージャパンカップ〉のチャンピオンが──」
「母さん」リンコの言葉を遮り、セイが低い声で言う。「ボクが、ガンプラをやめるって言ったら、母さんはどう思う?」
 セイが真顔で発した冗談に取れる言葉にリンコは一瞬呆気に取られたが、すぐに乾いた笑みをこぼした。「えぇ? セイがガンプラをやめるなんて。そんなことできるわけないでしょ?」
「本気で、本気でやめるって言ってたら?」
 セイは一段と語気を強めて繰り返した。その腫らした真剣な眼差しに発言の真意を汲み取ると、リンコは穏やかに返した。
「そうねぇ、母さん、寂しいかな」そう言うとリンコは今は空っぽになってしまっている店のショーウィンドウを開け、上段から透過性のある円柱内に小さい地球の浮かんだオブジェ・〈第二回ガンプラバトル選手権世界大会準優勝〉のトロフィーを手に取った。そして台座に彫られた“TAKESHI IORI”の文字を指でなぞりながらゆっくりと答えた。「前にも言ったけど、セイの作るガンプラって父さんの作ったガンプラと似てるのよ。父さんがいないこの店を母さん一人でやっていけてるのは、セイが作るガンプラのおかげなの。だからセイがガンプラを作らなくなっちゃうのは、ちょっと寂しいかな」
 言葉の最中、リンコが一瞬とても悲しそうな目つきを浮かべたのをセイは見逃さなかった。しかし、その姿を見ても処断しかねる迷いにセイは自分の気持ちの在り様がますます分からなくなる。その心の機微を察してリンコは手を引くように言葉で示した。
「でもね、やめるなとは母さんは言わない。それは結局セイの決めることでしょ。アニメの『ガンダム』みたいにセイがガンプラを作って戦わないと世界がどうにかなってしまうわけじゃないんだから。セイは、セイが今したいと思ったことを、思ったようにしなさい」
 母親であるリンコの優しく強い言葉に知らず涙が一筋頬を伝った。それでも、今はただどうしてもガンプラをやめないと一言奮うことができず、セイはそれがとても悔しかった。
「あーあ、なんか辛気臭くなっちゃったわね!」リンコが目元を赤くしながらけろっと明るく振舞った。「母さん、ゼロハチスーパーに夕飯の買い物に行ってくるわね。今夜はセイの大好きなすき焼きにしましょう! レイジくんも呼んでみんなで食べるわよぉ!」
 そう言うとリンコは店の奥で手際よく化粧を直して、セイに建前だけの店番を頼むと笑顔で手を振って店を出て行った。その姿を見送ったあと、プラモデルが一つも存在しない、いつもより広く感じるイオリ模型店でセイはたった一人立ちつくしていた。

(──よくもまぁ年甲斐もなく改造ガンプラなんて作れるよなぁ! ええ? 恥ずかしくないのかよォ! 痛すぎるんだよぉ!──)
 先刻の戦闘中に鉄仮面が吐いた台詞が頭の内側でとめどなくこだまする。その熾烈な言葉は疑いようのなかったイオリ・セイの中の価値観をひしゃげさすには十分なストレスを持っていた。
 セイは自分で切って張って作るからにはその機体にはオリジナルの設定を宿らせる必然があると思っていた。だからこそガンプラは文字通り無限の可能性を内包しているのだと。しかし、鉄仮面の言説はその考えを根底から翻した。第二次性長期の少年が付け加える程度のオリジナル設定はアニメ『機動戦士ガンダム』シリーズの硬派な設定には到底そぐわない、逆にその価値を貶めてしまう足枷であると、あの鉄仮面は声高に指摘した。
 ──身に覚えもあった。授業中に先生から指され間違えて想定している架空の機体スペックを読み上げたことも、昼休みに校内のベンチに座って人目を憚らずオリジナル機体をデッサンしていたことも、コウサカ・チナに何のためにデッサンをするのかと問われ「ガンプラ!」と恥じらいなく答えたことも、今まで疑うべくもなく営んできた全てが羞恥を覚えなければならない行為だったと知った途端、そのたびに周囲から嘲笑を受けていたと想像した途端、セイはガンプラを作っている自分がどうにも恥ずかしく思えてしまった。
 価値観が瓦解したと同時に、夢であった世界大会への挑戦手段も絶たれ、レイジという相棒も失ったセイには、潮時と断じるに十分な条件が揃いすぎていた。“ボクはもう、ガンプラをやめるよ”──精神を擦り減らしたセイがその言葉をレイジに向けて発してしまったのは、そのときは本意であったと言える。
 しかしそれでもまだ、カウンターから眺めるガンプラのない景色の中、壊れた《ビルドブースター》をポケットの生地越しに押さえる右手の力を緩めることは、セイにはどうしてもできずにいた──。

 まったく意味のない居るだけの店番をイオリ・セイが始めてからしばらく、開くはずのない店の入り口の自動ドアが突然開いた。セイの心臓が一度跳ね上がる。臨時休業の提げ看板が出ていたはずなんだけどな、と訝しんで、「すいません、いま商品が一個もなくて。臨時休業中なんです」と店内に入ってきた人物に事務的に声をかけた。
 しかし、その人物はセイの店員としての言葉を意に介さなかった。その容姿は赤いティーシャツに、高い襟の黄色いジャンパーを重ね着、カーキのハーフパンツを履いている。胸には青いリボンの勲章。帽子を目深に被り表情はうかがえなかったが、背丈から察するにセイと同じくらいの年齢の少年らしかった。
「こんにちは。キミが、イオリ・セイくんだね?」その少年は店内を見回してカウンターにいるセイの姿を見つけるとゆっくりと近付いてきた。「会えてよかった。ちょうどこれをキミに届けたかったんだ」
 そう言って少年から差し出された“もの”を見るやいなや、セイは悩んでいることもしばし忘れるほど、その顔に驚きを隠せなかった。

 * * * * *

 エコバックを肩にかけ足取り軽く買い物に出たリンコはその道中で、対向から歩いてくる常連客の姿を見つけて声をかけた。
「あら、こんにちは。ラルさん」
「リ、リンコさァん! こ、こんにちは!」
 鼻の下を伸ばしながらデレデレと挨拶をするイオリ模型店の常連客・ラル。MSグフをこよなく愛する彼はガンプラ及びガンダムの知識に関しては右に出る者のいない識者である。何故かガンプラに精通した筋の人たちからは“大尉”と呼ばれていたりもする。
 リンコは模型店のバトルベースが壊れてしまった近況などを交えながらラルとその場で世間話に興じたが、ふと先ほど息子に話したくてウズウズしていた話題を思い出す。
「そういえばラルさん、創勇斗くん、って知ってます?」
 その名前を耳にした瞬間、ラルの表情が急速に強張った。普段からは想像できない低く野太い声でラルはリンコを問い詰める。
「つ、創勇斗、ですと……!? リンコさん、いったいどこでその名前を?」
「さっきうちの店に遊びにきてたんですよ。勇斗くん」
 リンコの話を最後まで聞かぬうちに、ラルは歓喜の表情を顔面に爆発させ、雄叫び混じりにまくしたてた。
「いやぁ! まさかリンコさんが〈プラリーガージャパンカップ〉初代チャンピオンである創勇斗に興味がおありとは! そうですとも! ガンプラバトル大会と一口に言っても千差万別多種多様! セイくんやレイジくんが戦っているガンプラバトル選手権参加者の他にもたくさんの素晴らしいガンプラビルダーやファイターが存在しておりますぞ!」
「あ、あの……、ラルさん?」
「おっと、こんなところで立ち話もなんですな! すぐそこにレストランがあったはず! 語らいましょう、リンコさん! 創勇斗を初めとして名を馳せているビルダーやファイターの面々、不肖このラルが教えてしんぜましょうぞォ!! はっはっはっ!」
 勢いそのままにリンコの腕をぐいとひくと、ラルは雄々しく笑いながらすぐそばのレストランへと彼女を紳士的にエスコートしていった。リンコは苦笑いを浮かべながら、おとなしく引き摺られていく他なかった。
「あのー……、わたし、夕飯の買出しが……」

 * * * * *

「こ、これは、《ビルドブースター》じゃないか!?」

HG BUILD CUSTOM1/144 ビルドブースター (ガンダムビルドファイターズ)

 店内に入ってきた少年がイオリ・セイへと差し出してきたもの、それはHG名義でパッケージされた〈1/144 ビルドブースター〉であった。驚いて箱を開け中身を確認すると、二枚の青一色のランナーとシールが入っており、形状から見ても組み上がれば《ビルドブースター》になるであろうことは容易に想像できた。
「まだサンプルなんだけどね。〈バンダイホビーセンター〉から預かってきたんだ」
「そんな、どうして? 《ビルドブースター》は、ボクのオリジナルのはずじゃ……」
「キミのオリジナルだよ」少年は悪戯な口元で微笑む。「実は、護衛対象……というか〈イオリ・タケシ〉さんのことを調べているうちに、その息子であるセイくんのガンプラバトル選手権での活躍を目にしたのさ。そのときにボクも、ボクの父さんもキミの作品である《ビルドストライクガンダム フルパッケージ》に一目惚れしてしまってね。特にその《ビルドブースター》があまりに素敵で拡張性のあるデザインだったんで、父さんに成型機でサンプルを作ってもらってきたんだ」
 現実味のない話を滔々と並び連ねる少年。セイはともかくもその少年が〈バンダイホビーセンター〉の関係者だということだけは理解する。
「ゆくゆくは〈HG ビルドカスタムシリーズ〉として商品化したいと思ってる。取り急ぎそのセイくんの《ビルドブースター》をシリーズ第一弾として売り出したいというのがボクたちの、バンダイとしての希望だ。──急な話で申し訳ないんだけど、どうかな? 悪い話ではないと思うんだけど」
 自分の作ったガンプラが商品化される──モデラーにとってこれほど名誉なことはない、といつものセイなら純粋に喜べるはずだった。しかし、ぶり返してきたざわついた感情が今となってはそれすらも許さない。そっと箱のふたを閉めてつき返し、セイの表情が再び曇る。
「ごめんなさい」セイは感情を抑制して唇を噛み締めた。「ボクのオリジナルの改造ガンプラなんてやっぱり恥ずかしいし、みんなから馬鹿にされるかもしれないから」
 少年はセイの返答に少し驚いたが、ややあってなだめる様に次句を吐いた。
「そうか、残念。でもこの《ビルドブースター》は記念にもらってよ」そういうと少年は《ビルドブースター》のパッケージをセイに手渡す。「このガンプラだってセイくんに作ってもらいたいんじゃないかな?」
 少年はにこやかに笑う。その際、帽子の下にちらりと覗かせた顔を見て、セイは目を丸くし呆気に取られる。まさか! アニメじゃないのか!? 面食らうセイの胸にはわずかばかりながら熱い高揚があふれ始めていた。

 ──そのときだった。イオリ模型店の店内十二ヶ所に赤い灯が一斉に点った。それは次の瞬間に渦を巻くように不規則に散開し、店内を高速で飛び回る。イオリ・セイはその聞き覚えのある機動音に反応し目で追うが、知らず恐怖を覚えたらしく足が竦んでしまう。しかし、忘れるものか! あれは鉄仮面の《量産型ザク》!
「どうやら来店していたのはボクだけじゃなかったみたいだね」訳知り顔になった少年がすぐさま臨戦態勢に移る。ポケットから〈Gポット〉用のパイロットカードを取り出し、GPベースへと装填する。「やはりセイくんの手にガンプラが渡るのを警戒していたか。敵も恐れているんだ、彼を! ガンプラビルダー、イオリ・セイを!」
 セイの懐に抱えられた《ビルドブースター》のパッケージに、逃げ場なく包囲網を展開した《量産型ザク》の軍団がザクマシンガンの照準を合わせる。敵の狙いはセイの身体ごとガンプラを撃ち壊すことと容易に知れた。十二個のモノアイが底気味悪く輝き、次の瞬間マシンガンの連続した銃声が店内を放射状に伝った。セイは恐怖に慄き、反射的に目を瞑る。彼が最後に視界に捉えたのは三百六十度全天に構えられたザクマシンガンの銃口と直後に自分に向けて降り注ぐ無数の銃弾の雨、そして──宙に舞った帽子と、瞬く金色の“G”があしらわれた勲章。

 次に目を開けたとき、イオリ・セイは信じがたい光景を目にする。胸に抱いた無傷のガンプラ。痛みひとつない自分の身体。そして、それらを球状に包み込む緑色に輝く優しく暖かい光──。
「これは、サイコフレームの輝き……、いや違う! これは〈ifsユニット〉!」
 見るとセイの隣には形成されたコクピットブロック内で光球状の操縦桿を握る少年の姿があった。少年の操るガンプラに気圧されて十二機の《量産型ザク》は慄然と固まっている。帽子を剥いだ少年の顔を再度見遣って、セイの胸の高鳴りは確信を得るに至った。
「やっぱりキミは……、〈イレイ・ハル〉!!」

ビギニング30ガンダム3

ビギニング30ガンダム2

ビギニング30ガンダム1

 セイを護るのは、全ifsユニットを結集させた絶対防御のエネルギーフィールド。高出力を擁するクリアパーツを全身に煌かせ、さながら救世主のように舞い降りたるは《ビギニング30ガンダム》。機体を駆るのは“ビギニングのハル”の二つ名で称えられるガンプラマイスター、〈イレイ・ハル〉その人だった。

ビギニング30ガンダム4

イレイ・ハル

「イオリ・セイくん。キミが再び立ち上がるまで、奴らにはキミに指一本触れさせはしない! それが〈ガンプラマイスター〉であるボクと、《ビギニング》の役目だ!」

 * * * * *

 レストランにある二人がけのテラス席に座り、ラルが運ばれてきたうまい水を配膳しながら口を開く。
「バンダイホビーセンターに勤務する〈イレイ・ヒノデ〉を父に持つ少年〈イレイ・ハル〉。一年前まではガンプラに触れたことすらない素人であったが、愛機《ビギニングガンダム》と出会ってその才能を開花させた。彼がガンプラを始めてから間もなく開催されたガンプラバトル選手権で、ガンプラマイスター〈ボリス・シャウアー〉と繰り広げた凄絶なる死闘は誰の記憶にも新しいことだろう。一年経った現在、彼はガンプラの面白さを伝道するためにガンプラマイスターを務めている」
「は、はぁ……」
「ガンプラ選手権以降の彼の愛機は《ビギニング30ガンダム》。《ビギニングガンダム》にバンダイから送られた一点物の多色成形ランナーパーツを組み込んだ強化形態で、最大の特徴は全身に配された二十基のifs(i-field control sys-tem)ユニットと十五本ものビームサーベル。攻守ともに高次元での戦闘を可能にした、まさに“始まりの機体”というわけですよ、リンコさん」
「そ、そうですか」

 * * * * *

 唐突な戦場への乱入者に戸惑っていた《量産型ザク》らの硬直が一斉に解かれ、標的が任務遂行の障害と見なされた《ビギニング30ガンダム》へと切り替わる。四機三列で編成を組み直し時間差を利用したザクマシンガンの波状砲火が飛んでくるのを、《ビギニング30》はビームサーベルが鞭状になった“ビームウィップ”を振るい残らず薙ぎ払う。その無駄のない華麗な応戦にイオリ・セイは思わず息を漏らす。
「あのビームサーベル、刀身が輪ゴムになってるのか。ガンプラにあんな改造があるなんて……」
「セイくん、これだけは言っておく」イレイ・ハルは戦闘をこなしながらも、セイに向かってたしなめるように言葉を紡ぐ。「その《ビルドブースター》はボクらが、ボクらのエゴで勝手に発売したいわけじゃあない。きちんとバンダイ社内に企画を通して、エンドユーザーへの調査もおこなって、その上でみんなが《ビルドブースター》の商品化を望んだから、だから販売したいんだ。みんながキミの作ったガンプラを欲しいって、そう言ってるんだよ」
 自分のガンプラが認められる嬉しさ──ハルの言葉に忘れかけていた動機の断片が甦り、セイの頬を上気させる。少し歯を見せたセイの呼吸がわずか速度を増し、塞がっていた心がようやく胎動を始めた。

 《ビギニング30》は戦いながら《量産型ザク》を密集状態になるよう店舗の隅へと追い詰めた。その好機に《ビギニング30》は強化型ビームライフルを構える。次の瞬間、プラズマ光が走ると同時に銃口から吐き出された極太の火線が敵の一団を横断する。しかし敵も然るもので、一機も欠けることなく間一髪これを散開し回避する。
 イレイ・ハルは威嚇射撃をおこなったつもりはなかった。並のファイターなら今の一撃で全機撃墜する射角を取って放ったのだ。ハルは自身の経験則から敵の力量を正しく見極める。どういうカラクリなのかは知らないが、あのパチ組みの《量産型ザク》、個々のマニューバだけなら世界大会トップクラス、いやそれ以上──。得体の知れない強敵を前にして、戦力が欲しいと純粋に感じたのは久しぶりの感覚だった。それも一刻も早く。何より隣で迷いが氷解しかけている、本来なら相当な戦力を有するであろうイオリ・セイ。彼をこれ以上持て余しておくわけにはいかないと、ハルは直感的に察した。

「セイくん! ガンプラは、恥ずかしいものなんかじゃない!」イレイ・ハルの懇願にも似た言葉、その一言一句がイオリ・セイの心臓を叩く。「キミは知ってるハズだ! ガンプラは楽しくて、奥深くて、そして面白いものだって!」
 セイのガンプラを抱く手が震える。堪えきれぬ直情はまるで血管を流動するマントルのように身体の芯を熱く巡る。拳に、五指に力が入る。セイの迷いに、ハルはただただ至極シンプルな答えを導いた。
「セイくんが好きなものを好きなように作ればいいだけだよ! だから、つくろうよ! ガンプラ!」
 セイは無意識に目を閉じて、──追憶していた。憧れだった父親に肩車され、天高くトロフィーを掲げた幼き日の想い。いつか父さんのようになりたいと切に願ったあの日のことを。──そしてゆっくりと目を開き、さきほどリンコが悲しげに触れた父のトロフィーを見遣った。その視線でセイは小さく強く誓う。
「父さん……母さん、ごめん。ボクは……」イオリ・セイは嬉しそうに笑った。「つくるよ」
 一度小さい深呼吸をした後、セイは再びガンプラの箱を開け放ち、緑色の薄刃ニッパーをランナーへと走らせた。

「無茶苦茶だ! こんな成型色で《ビルドブースター》を再現しようだなんて!」
 イレイ・ハルに手渡された《ビルドブースター》を作り始めるや否や、イオリ・セイの中で種子が弾けた。悪態を吐きながらも怒涛のごとく制作していく。その卓越した技術と尋常ならざる速度にハルは目を見張らざるをえなかった。
「デザインナイフでゲート跡を取りつつ、赤色部及び白色部をガンマカ塗り……チッ! なら隠ぺい力の強いMSホワイトを筆塗りで着色! 仮組みから400番・800番・1200番の順で簡易合わせ目処理! 可動部確認、ヘタリ防止策でキャノン及び両翼接続部をPCとランナー片で新造! トップコートは乾燥時間考慮のうえ見送り! 代用としてメラミンスポンジで表面処理! つや消し表現を再現!──」
 圧巻だった。まさに瞬く間と言っていいほどの短時間でセイは《ビルドブースター》を高い完成度で組み上げてしまった。ハルはその様子を横目に嬉々として身震いして、凄い、と思わず本心を独りごちていた。

 イオリ・セイが立ち直っていく間も《ビギニング30ガンダム》と《量産型ザク》の戦闘は継続していた。多勢に無勢ながらも十二機からの間断ない掃射を掠らせることも許さず、淡々といなしていく《ビギニング30》。しかし《ビギニング30》もまた、作業に没頭するセイの護衛にifsユニットを全基回してしまっているため、殲滅力が低下し、どうにも攻めあぐねていた。双方共に決定力に欠け、戦況は膠着。そして、この均衡を打破したのは──完成した青碧の翼、他ならぬ《ビルドブースター》とイオリ・セイだった。
「ハルくん、遅くなってごめん。細部まで手を入れてたから」
 セイは気恥ずかしそうに言うと、貸し出し用のGPベースで《ビルドブースター》を起動させる。大気中のプラフスキー粒子が収縮し、コクピットブロックが形成され、仕上がったばかりの《ビルドブースター》が飛翔する。
「“ハル”でいいよ。その代わりボクも“セイ”って呼ぶから」
 そう言ってハルの横顔が口の端を上げた。イオリ模型店内に青白く屹立する二つのコクピットブロック、並び立つはイオリ・セイとイレイ・ハル。四つの瞳は彼らの敵を鋭く睥睨する。
「セイ、キミにもう迷いはないね。見違える顔になった」
「ああ。考えてみれば何も難しいことなんてなかった。いや、考えなくて良かったんだ。ガンプラだって、心だって、レイジとの関係だってそうだ。壊れたら何度だって直す。だってボクは──」
 セイが光球状の操縦桿を大きく前方へと突き出す。その動作に同期して《ビルドブースター》がスロットル全開で戦闘空域へと飛び出していく。
「──ボクは、“ビルダー”なんだ!」
 飛来して迫る敵増援の機影を確認すると、《量産型ザク》らは本来のターゲットを再認識してザクマシンガンの銃口で一斉に《ビルドブースター》を追いかける。間髪いれずに放たれた弾丸の嵐が《ビルドブースター》を全方位から襲った。
「指一本触れさせないと言ったァ!!」
 ハルが吠え、《ビギニング30》が片手で指揮を振るうと《ビルドブースター》の周囲にifsユニットが張り付く。次の瞬間、緑色に光めくエネルギーフィールドが球状に機体を包み込み、接触した敵機の銃弾が順に消滅・無効化されていく。ifsユニットの絶対防御壁は未だ健在、機能している。

ビルドブースター

 ifsユニットを纏ったおかげで防御にかまう憂慮がなくなり、攻撃一辺倒へ意識を集中させるセイ。直近の《量産型ザク》をターゲットサイトに捉えると慎重に狙いを定めて、次いで迷うことなくトリガーを引いた。二門のビームキャノンから発射された高出力の砲撃は《量産型ザク》に見事に当たる──ことはなく、まったく明後日の方向でイオリ模型店の壁を激しく焦がした。それを見、固まる敵味方。
「まさかセイ、もしかしてキミ……」ハルが引きつった苦笑いで訊ねる。「操縦は下手なの!?」
 その問いにセイは沈黙で答え、──もう次の壁を焼いていた。

 ところが、止まっていた戦場が再び動き出すと、イオリ・セイのへたくそな操縦がとんでもない勝機を生んでいたことが判明する。それにいち早く気づいたのはイレイ・ハル。
「……《ザク》の挙動がおかしい?」
 敵の《量産型ザク》は洗練された動きで完璧な隊列を組み戦場を広域に支配する、まさに教科書通りのマニューバを突き詰めた組織戦・包囲戦を展開していた。しかし、その動きは相手の攻撃が自機を狙うと先読みできてのこと──。
 《量産型ザク》はイオリ・セイの操縦を怖じ恐れた。そのへたくそな砲撃はこちらを狙っていると見えるのにまったく別の方向に放たれるのだ。これでは下手に回避ができない。戦場にイオリ・セイの駆る《ビルドブースター》が存在するというプレッシャーは、何よりも《量産型ザク》の動きを効果的に制限した。
「そうか、そういうことか! ナイスアシストだよ、セイ」敵に感じた違和感を理解すると、ハルはこの勝機を見逃さず攻勢を仕掛ける。その眼差しが企んだ。「ifsユニットがなくったって、《ビギニング》にはこういう戦い方もあるっ!」
 次の瞬間、《ビギニング30》は上空へ高々とシールドを投げ捨てた──。
「背中からビームサーベルを六本!!」《ビギニング30》は背中に装備する六本のビームサーベルを引き抜いて、両手の親指・人指し指・中指・薬指の間でそれぞれ挟む。「──そして!!」
 頂点に達し、自由落下してくるシールドが目の前を通過したとき、その手が交差する。
「シールドの裏から……さらに二本!!」シールド裏の予備のビームサーベルを二本外し、両手の薬指と小指の間にそれぞれ挟んだ。「左右の手に四本のビームサーベル!!」

 * * * * *

 うまい水を一口で飲み干し、空のグラスをテーブルへと置きながらラルが口を開いた。
「《ビギニング》に異なる三つの奥義あり。一つ、ビームホーンを用いた攻防一体の突撃技〈ライトニング・パワー・ビートル〉。一つ、ifsユニットを用いた超高速の投擲技〈爆星光弾(メテオノヴァ)〉。そして残る一つは、八本ものビームサーベルを用い、乱戦時における敵機の迅速なる殲滅を主眼に置いた攻撃特化形態、その名も──」

 * * * * *

ビギニング無双 八岐大蛇

「ビギニング無双、壱の型!! 〈八岐大蛇(ヤマタノオロチ)〉!!」
 ビームサーベル八本を両の手に、さながら伝説龍の爪のごとく構えた《ビギニング30ガンダム》の勇姿を見、セイは八つ首の大蛇が嘶くのを聞いた。プラフスキー粒子が鳴動し、《量産型ザク》らは自らの窮状を一目で看破する。
「いくよ」
 ハルが短く気を吐くと同時に《ビギニング30》がゆらりと動く。《量産型ザク》がその只ならぬ気配に身構えた瞬間、“敵は既に背後にいた”。圧倒的な速さで斬り抜けられた《量産型ザク》六機は驚く暇も与えられず、次々に爆散した。
「つ、強すぎる!」あれほど強敵だった《量産型ザク》の半数を文字通り瞬殺した、視認すらままならぬ戦闘速度にセイはただ肝を抜かれるばかりだった。「これがガンプラマイスターの、イレイ・ハルの実力……!」
 《ビギニング30》は止まらない。八つの得物を研ぎ澄まして、戦場を駆け抜ける嵐となる──。
「縦横無尽!!」左手の四本のビームサーベルで防御姿勢の《ザク》を圧し込み、背後に控えていた敵機ごと二機同時に斬り千切る。
「疾風怒濤!!」ビームサーベルを警戒して腕部の動きに注意を払う《ザク》に対しては、死角から蹴り上げて頭部をPCごと吹き飛ばす。
「天下無双!!」前後で挟撃を仕掛けてきた《ザク》のコンビネーションは、まるで舞踏を舞うがごとく身体をしなやかに回転させ左右のビームサーベルで千々に斬り裂く。
 瞬く間に十一機もの敵を撃墜して見せた《ビギニング30》は、残る最後の《量産型ザク》へと高速で接近する。残った《量産型ザク》はその鬼気迫る威圧感に気圧されるも、何とか最善策を講じようと試みる──それすなわち逃走を前提とした全力の退き撃ち。袈裟に斬り込んだ《ビギニング30》の刃先は、全速力で後方へと下がる《ザク》の装甲にわずかに届かず──。
「いや、これでいい!」
 獲物を仕留め損ねたと思われたハルが吠えると同時に、《ビギニング30》の後方から高速で迫る機影があった、──《ビルドブースター》である。ハルがifsユニットを操作すると、煌く緑の衣をたなびかせて、さらに《ビルドブースター》は加速する。それは《ザク》との距離を急激に詰める。驚いた《ザク》は破れかぶれに慌ててシールドを前方に突き出す。
「させない!」
 振り切った斬撃の遠心力を利用して《ビギニング30》は錐揉み回転しながら咄嗟に前方へと身体を泳がせた。その勢いのままに八本のビームサーベルが《量産型ザク》の右肩をシールドごと溶断する。
「これがビギニング無双・八岐大蛇の必殺技、〈ドラゴンクラッシュ〉だ!」

ドラゴンクラッシュ

「うわぁぁぁぁぁぁッ!!」
 セイが咆哮する。緑色に輝く光弾と化した《ビルドブースター》が、恐怖に慄く《量産型ザク》の腹部へと激突し、そのまま機体を上下に千切った。間を置かずイオリ模型店に響き渡るのは戦闘終了を知らせる爆発音。
 店内に残るプラフスキー粒子が最後に見せたエフェクトを背景に、セイとハルは互いに笑顔を見合わせると、どちらからともなく固い握手を交わしていた。

 * * * * *

「〈イオリ・タケシ〉さんはお店にはいなかったよ。代わりにイオリ・セイに会えた。プレゼントも気に入ってもらえたよ」
 携帯で通話しながらイレイ・ハルはイオリ・セイの方をチラリと見遣った。セイは戦闘が終わってすぐ《ビルドブースター》のメンテナンスに没頭し始めている。その無邪気な様子を見てハルは微笑むと、父である〈イレイ・ヒノデ〉との通話に戻った。
「父さんの方の進捗はどう? 敵のやり方も節操なくなってきてるし、そろそろ敵の本拠地に乗り込みたいんだ。許可はもう出てる? なら行くよ。大河や勇斗にもよろしく言っておいて」
 ハルが通話を終えて携帯をしまいながら振り向くと、メンテを終えたセイが真剣な眼差しを浮かべてそこに立っていた。
「鉄仮面のところに行くんだろ?」決意を帯びた声音でセイは言葉を発した。「ボクも一緒に行く。アイツを、レイジを迎えにいかなくちゃ」
 ハルは反射的に、一般人は危険だから云々という月並みな台詞を吐きかけたが、思わず笑いがこぼれてしまい発言を止めた。セイと自分、いったいどれほどの違いがあるというのか。
「レイジって人は、友達なんだね?」
「ああ。ボクの、相棒だ」
 知らずセイの芯の強い双眸にハルは引き込まれていた。時間にしてわずか数秒、交差した視線がその覚悟を確認するとハルは小さく頷いた。少し遅れてセイも静かに頷く。
「さぁ行こう、セイ」ハルは敵陣へ赴く鼓舞を込めて、敢えて言葉で明示したのだ。「南町にある〈アニメショップゼロ〉。レイジくんはそこにいる!」

 * * * * *

 プラフスキー粒子流出事件に関して、引き続き進められていた調査により新たに報告された事実があった。それは、プラフスキー粒子流出エリア内のガンプラが“必ずしもすべて消失するわけではない”ということ。近隣住民からの目撃証言で、エリア内でガンプラバトルが発生していたケースがごく少数ながら確認されていたのだ。
 長谷川淳はこの報告の検証を急務とした。──エリア内にあっても消失しないガンプラの謎、これが解き明かせれば、結果的に犯行を無効化することができるのではないかと考えていたからだ。しかしながら、あまりにも報告件数が少ないことに加え、ガンプラバトルをしていたとされる重要参考人が揃って行方不明や音信不通となっており、検証は遅々として進まずにいた──。

 故に、行き詰った長谷川淳はまったく別方面からのアプローチを開始した。プラフスキー粒子内で消失しない=操られないのであれば、そもそも動かしている手段がプラフスキー粒子を用いていない可能性があると仮定した──プラフスキー粒子以外でガンプラを自在に動かす方法に、長谷川淳は一つだけ心当たりがあった。自身の仮説を実証するため、長谷川淳は現在アメリカに出張中の同僚・タナベへと連絡を取った。

 * * * * *

(先日、長谷川指導員から連絡来たときはビックリしましたよ。久し振りの挨拶がいきなり「〈GPEX〉研究の第一人者を寄越してくれ!」ですもん。仕事熱心なところは変わってないなあって)
「そんなノスタルジーを聞きたくてわざわざ電話してるわけじゃないぞ、タナベ指導員」
 タナベの調子のいい発言に長谷川淳は溜息で応じる。Gセンタービル五階、G研本部の一室で、長谷川淳はキーボードを叩きながらタナベと通話していた。
 三日前に〈GPEX〉がプラフスキー粒子流出事件に対する自身の仮説の実証、そして有事の際のカウンター措置になると踏んだ長谷川淳はその研究の第一人者を連れてくるよう、アメリカにいるタナベへと依頼し、彼はそれを快諾した。その約束の日が本日。数分前に鳴り響いた突然の着信は、いま日本へ向かっているというジェット機内にいるタナベからの連絡だった。
「それで、結局〈GPEX〉の研究者は連れてこられたの?」
(いやぁそれがですねぇ。教授の予定がどうしても合わないらしくて──)
 やっぱりか、と長谷川淳は憮然とした表情を浮かべる。しかしそうなると新たな疑問も出てくる。──ではタナベ指導員は何のために日本に?
(そのー……代わりといってはなんですが、同じマサチューセッツ工科大・〈GPEX〉研究室の学生の中に知り合いの日本人がいたんで連れてきました。〈GPEX無差別級・初代チャンプ決定戦〉ファイナリストですよ! 文句ないでしょう)
 勝手に手柄を立て始めたタナベの言葉を話半分に聞き流しながら、長谷川淳は自身の記憶を手繰る。確か決着がつかないまま終わったはずの〈GPEX無差別級・初代チャンプ決定戦〉のファイナリストは二人、そして両者とも渡米していたはず。果たしてタナベはどちらを連れてきたというのか。
(ボクはもうちょっとで羽田に着くんですが、彼は今さっき窓の外にGセンタービル屋上の《ガンダム》が見えたって言って、先に〈ナノライズ〉して飛び降りました。だからもうそちらに着く頃でしょ──)
 タナベが言い終わる前に、長谷川淳の背後で耳を劈く轟音とともに部屋の天井が崩れ落ち、辺り一面に砂埃が立ち込めた。唐突な出来事に唖然とした長谷川淳は袖口で口を押さえつつ扇いで視界を晴らすと、そこに頭から床に突き刺さったHGのガンプラが見つかった。
「ファイアパターンの《ダブルオーガンダム》……!」
 あまりに無茶苦茶な登場の仕方も相まって長谷川淳は誰が帰国したのか、即座に理解できてしまった。

 * * * * *

 〈ガンプラエクストリーム〉──通称〈GPEX〉。手甲装着型端末・〈ナノライザー〉が認識した生体データを元に、人間を小さく再構成──“電縮”すると同時に、ガンプラを操縦できるよう変換──“電換”を行う。その際、ガンプラ内に設けられる特殊コクピットへとパイロットを“電送”し、実物大のガンプラを操縦することが可能となる新感覚ホビーである。
 プラフスキー粒子流出事件中にバトルを行ったガンプラ群がプラフスキー粒子に頼らず動いているという長谷川淳の仮説、その可能性として挙げられるのがこの〈GPEX〉であった。人間を1/144サイズへと縮小させ、ガンプラ内からの直接操縦するという相違点こそあれど、事情を知らない目撃者から見ればそれはガンプラが動いていることに変わりはない、と長谷川淳は考えたのだ。

 床に植わった《ダブルオーガンダム》が眩い輝きを放ち始め、次の瞬間パイロットが元の大きさに戻りながら排出される。いわゆる〈ナノアウト〉である。
「いちちち……爆いてぇーぜ」
 頭にできたコブを撫でながらガンプラから出てきた青年。オレンジのロングティーシャツにネイビーのタンクトップを重ね着、さらに上からに赤いシャツを羽織っている。丸顔にちょんまげという個性的な風貌。そして左手の甲には〈ナノライザー〉が装着されていた。
 その顔を見て、長谷川淳はやはり自分の予想は当たっていたことと知る。素行に多少問題があるものの、数年前にガンプラで悪事を働いていた巨大組織・幻獣党を壊滅させ、果ては地獄を平定して第六天魔王の魔の手から現世を救った〈GPEX〉プレイヤーとして名高い──
「〈岩賀(がんが)頑(がん)〉くんだね? 私は長谷川だ。指導員をしている。よろしく」長谷川淳は爽やかに初対面の挨拶をこなす。「さっそくで悪いけど、少し協力してほしいことがあるんだ」
「ああ、その必要ならねぇぜ」
 長谷川淳が〈岩賀頑〉と呼んだ青年は、衣服の埃をはたきながらしれと言い放った。
「向こうでだいたい話は聞いた。報告と資料映像も見せてもらったけど、ありゃあどう見ても〈GPEX〉じゃねぇな。れっきとしたプラフスキー粒子で動いてるガンプラだぜ」
「違うのか。それならばいったい消失するガンプラと消失しないガンプラ、いったい何が違うというんだ?」
 思考が振り出しに戻ってしまった長谷川淳はまた深く考え込み始める。その様子を目にして頑は鼻を鳴らしながら悪戯ににやつく。
「実はその謎もだいたい見当はついてるんだよねぇ」
「なんだって? それは本当かい!?」
 頑の含みのある言い方に思わず声を張り上げてしまう長谷川淳。頑は短くもったいぶると意味深な単語を発した。
「記憶だよ」
 記憶? いったい誰のどんな記憶だというのだ? 頑の断片的なヒントによりさらに難解な思考の迷宮へと突き落とされたようで長谷川淳はますます眉をしかめる。
「記憶って、それはいったいどういう──」
「説明するより直接見たほうが早いだろ? 爆いこうぜ!」長谷川淳が言い終わらぬうちに頑のご機嫌な言葉がその問い掛けを上書いた。久し振りの日本。久し振りの敵。久し振りのバトル。まだ見ぬ世界へのワクワクするような興奮だけが頑をただひたすらに突き動かしていた。「〈アニメショップゼロ〉ってところに敵の親玉がいんだろ? モチロンそいつをブッ倒しにさ!」


第四章につづく

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テーマ : 二次創作
ジャンル : 小説・文学

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No title

 セイのとーちゃんって生きてたんですねぇ、てっきり定番の死んでるor行方不明かと・・・危ないおっさんでしたねw

お互い選手権の第二回があることを祈りましょう!

ところで勇斗や大河は歳とってない設定??

No title

更新待ってました!
手早くキレイに作るのって難しいんですよね…
勇斗の出番が待ち遠しいですね

はじめまして!
二次作品とかあまり読まないのですが、プラモウォーズネタもあり興味本位で読んでみたら面白いですbb

続編も大変でしょうけど期待してます。

No title

コメントありがとうございます。
そして返信遅くなりすいません。

>Yanagi1112さん
最近の子供向けの流行は親父は死なないみたいっすよwそれどころかすべての元凶だったり相応のチート野郎だったりします(ダンボール内で遊ぶ兵器しかり最新恐竜戦隊しかり)

勇斗や大河他は全部基本的に原作終了時の設定ですねー。
一応例外は以下の四人。
○プラモ狂四郎⇒『新プラモ狂四郎』を参戦させた関係上、青年実業家の年齢で参戦。
○岩賀頑⇒21話(最終話)でいい歳した二児の親父になっちゃうんで、20話~21話間のMIT在学時代の年齢で参戦。
○天神キット&館山ビルト⇒最終話以降だとビルトの個性が完全に死ぬので、原作途中時点からの参戦。

>NBさん
次回更新はいましばらくお待ちください。
鉢巻しめるとスイッチが入る勇斗は
同じく前髪かきあげるとスイッチが入るあの人と絡む予定ですw
乞うご期待!

>通りすがりさん
ありがとうございます。励みになります。

私もあまり二次創作とか書かないのですが
ガンプラ漫画&アニメ32年間の感謝企画みたいなもんですかねー!
この好機にオールスターもの絶対来ると思ったんですが
公式もやらなければ皆さん誰も二次創作すらしないので
恥ずかしながら自分の拙作がやっている次第でございます。

すぐに続きもアップできると思うので
勇斗の活躍に期待しつつ、お待ちいただければ光栄です。
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Author:ササモト
ロボとヒーローをこよなく愛しすぎて生活費と部屋のスペースが圧迫される日々を送る20代後半。
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